酵素特集

皆さんは『酵素』と聞いて何を思い浮かべますか?
消化酵素、酵素配合洗剤、酵素風呂など、普段からよく耳にする言葉ですが、実際はよく知らないという方も多いのではないでしょうか。実は、私たちは生活の知恵として、昔から酵素を活用しているのです。その代表的な例が味噌やしょう油、チーズ、ヨーグルト、ビール、ワインなどの発酵商品です。酵素は、アミノ酸が数百個つながってできたタンパク質からなり、顕微鏡でしか見ることができないほど小さな物質です。

酵素とは

1832年にフランスのA.パヤンとJ.F.ペルソらによって発見されてから「生物が生きていく上で必要不可欠な物質」ということが、数々の研究で分かってきました。最近ではバイオテクノロジー技術、医薬品、化粧品などのあらゆる分野で応用が進んでいます。今回はその中でも「私たちの身体の中で働く酵素」について特集したいと思います。

身近なところで利用されている酵素パワー

発酵食品しょう油、味噌、酒類、チーズは麺、酵母、乳酸菌といった微生物が出す酵素によって作られる
食品の加工パンでは、イーストの代わりに酵素でふっくら仕上げる。
イカの皮むきや数の子の処理にも発酵が使われる。
医療品胃薬などの消化剤には、デンプン分解酵素が使用されている。
化粧品など美白用化粧料、ヘアケア用品、入浴剤、歯磨き粉など様々な生活用品に使用されている。
繊維の処理昔は軽石で行なわれていたジーンズのストーンウォッシュ加工は、現在は酵素を用いた処理が主流である。
洗濯用洗剤洗濯、食器用など様々な洗剤に酵素が使われている。

酵素ってなぁに?~酵素の秘密にせまる!~

命を支える酵素

酵素とは「あらゆる生物の体内にあり、生命活動をスムーズに働かせるタンパク質」のことです。私たちの身体の中には、約5000種以上の酵素が存在しています。毎日の食事で得た栄養は、そのままでは体内に吸収することができませんが、酵素の働きによって食べたものが分解され、細胞や各器官が作られているのです。またそれだけではなく、呼吸や免疫力向上、老化防止など生命を維持する上でとても重要な役割を果たしています。最大の特徴は、とても穏やかな条件で物質を処理するということです。
例えば、肉や卵などに含まれるタンパク質を分解する場合、強力な酸を加え、さらに長時間沸騰させてもなかなか分解はできません。しかし『タンパク質分解酵素」を加えるだけで、体温(37℃)でも簡単に分解することができます。

タンパク質を分解する反応

酵素の量は決まっている!?

身体の中で作られる酵素には「消化酵素」と「代謝酵素」の2種類があります。
※ちなみに「代謝」とは、体内に吸収された栄養素を身体の働きに役立たせるために、合成・加工・分解する作用のことを言います

潜在酵素

これらの酵素は体内の『潜在酵素』から作られますが、アメリカのハウエル博士によると”一生の間に作られる潜在酵素の量には限りがあり、この量が生命の長さを決定する”と言われています。つまり酵素は、使ってばかりではどんどん少なくなり、病気にもかかりやすく、寿命も短くなってしまうのです。その仕組みは、いわば銀行口座のようなもので、酵素も「節約と貯蓄」が大切です。

酵素がたくさんある人、ない人

寿命は自分でコントロールできる? ~健康長寿のコツ~

干物と大根おろし

節約と貯蓄

節約 ~過食はしない!~

過食をすれば、それだけ体内の潜在酵素は消化酵素として使われてしまいます。
これ以上減らさないためには過食をせず、腹八分目を守りましょう。

貯蓄 ~生きた酵素をとろう!~

代謝酵素は、体内でしか作られませんが、消化酵素は食べ物から補うことができます。
限られた量の潜在酵素をムダづかいしないためには、消化酵素を豊富に含む生鮮食品を取り入れることが重要です。

消化酵素を効率よくとるためのポイント

生の食品に注目しよう!

消化酵素は様々な生鮮食品に含まれますが、熱にとても弱く、加熱(60~70℃以上)すると性質が変化(変性)してしまいます。インスタントや冷凍食品などの便利な食べ物が増えた一方で、生の食品を摂る量は減ってきたように思います。加熱したものばかりでなく、自然の食品を生でとり入れるように心がけましょう。
パイナップル、パパイア、キウイ、いちご、バナナ、大根おろし、キャベツ、やまいも、刺身などは消化酵素が豊富な食品です。

豆知識

焼き魚に大根おろし、ステーキにパイナップル、焼肉・焼き鳥にキャベツetc・・・
これらの食品は、味を引き立てるためだけではなく、肉や魚の消化に時間のかかるタンパク質を効率よく分解するために添えられています。

発酵食品で酵素を貯蓄

味噌やしょう油、チーズ、ヨーグルト、ワインなどの発酵商品は、微生物(酵母菌や乳酸菌など)の働きによって食品がすでに分解されているので、体内の消化酵素の負担が減ります。
また、微生物は有用な酵素も作り出してくれています。味噌汁は火をとめてから味噌を入れるなど、できるだけ生に近い状態で食べる工夫をしてみましょう。

酵素をアシストする「補酵素」

酵素の中には単体で作用しないものがあり、その能力を最大限に発揮するためには「補酵素(コエンザイム)」が必要になります。

コエンザイム

補酵素と酵素が結合することで活性化されて、はじめて体内で働くことができます。代表的な補酵素は、ビタミンやミネラルなどですが、特にビタミンB群は身体のあらゆる酵素の働きに関与してると言われています。不足すると、肥満・疲労・老化の加速、さらにはがんや糖尿病といった生活習慣病など、重大な病気を招く原因になることもあります。

ビタミンB群は、レバー・卵・納豆・牛乳・ほうれん草・赤身の刺身などに豊富に含まれています。水溶性のビタミンであるため水に溶けやすいので、軽く洗ってすばやく調理するとよいようです。また、熱にも弱いので、火の通し過ぎには注意しましょう!
※酵素や補酵素は、どんなに気を付けて調理をしても、かなりの量の有効成分が失われてしまうようです。

サプリメントや健康食品などに頼りすぎるのは問題ですが、有効に利用して健康な身体を保ちましょう。